2005年2月18日

学級会で何かが解決すると思うな

メンバーみんなが口を揃えて必要だという「話し合い」
根本的な何かを忘れているような気もするが、そういうことらしい。
矢口はメンバーが全員揃って少し仕事が早く終わった日、ちょっと恥ずかしいけど言った。
「今日は話し合いをします!」

これから友達と会う予定があるんだけど。
藤本はそう言いたかったけど、なんとなく言えなかった。

以前から気になっていたノルウェー料理店に行こうと話していた、紺野と小川。
紺野は泣き出しそうなくらいに表情を暗くさせた。
娘。のことは大事だけれど、食べ物のほうがずっと大事。
そんな紺野の肩に手を置き、小川はそっと言った。
「遅くなってもいいからさ、行こうよ」

今日は話し合うんだ。
初めての催し物に、田中は喜びを隠しきれない。


そんなわけでサブちゃんとして初仕事、吉澤が仕切る。
「はい、じゃあ、みんなてきとーに座ってね」
言葉どおり素直に、てきとーに座る面々。
だが吉澤は納得しない。
「あ、五期同士、六期同士で固まらないで。梨華ちゃんは端のほうに行って。まんなかにいるとうるさそうだから」
コンパの仕切りのようにメンバーをばらけさせた吉澤は手紙を読み始める。
「まずねぇ、ファンレターの中にこういうのがありました。千葉県野田市、21歳の男性から。
 いつも応援させて頂いてます。みなさん、これからのモーニング娘。のことを話し合いたいと言っておられるようですが、初めてだとみんな緊張してしまって上手くいかないと思います。なので、少人数ごとのグループに分かれて話し合われては如何でしょうか? p.s. ボクは同じモーニング娘。好きの友達と、よく今後の娘。について熱く語ったりしています(爆) 気がついたら夜を明かし、朝を過ぎて夕方になっているくらいです(核爆)」

読み上げた吉澤が顔をあげる前に、藤本がつっこんだ。
「なによ、その『爆』とか『核爆』とかって」
「さあ。用語じゃない?」
吉澤が首を傾げてそう言うと、亀井がけらけら笑いながら仰け反る。
「きも~い」
「ぜったいこの人、萌えとか使ってるよねー!」
「いやぁだ~」
亀井と道重が盛り上がる。
他のメンバーは苦笑いを浮かべるばかりで、二人に注意したり、諌めたりしようとはしない。
言いたいことを言いたいままに言ってしまい、それでいて何故か許されるこの二人が羨ましい。

亀井と道重が笑い続けてはいたが、矢口はあらかじめ用意していた箱を持ち、メンバーに言う。
「とりあえず、今日は少人数で話し合ってみようよ」
メンバーが組み分けのくじを引き始めると、亀井と道重も表情を切り替えた。

話し合いましょー、しか言わない田中。
いろいろ言いたいことはあるが、言葉を知らないので伝えられない。

高橋は神妙な顔をして考え込んでいる。
あまりにもいろいろ考えすぎて、自分が今どこにいるのかわからなくなってしまった。

そんな二人の痛々しいくらいに真剣な表情に、矢口が励ますように言う。
「ここの二人はさ、すっごい頑張ってるからさ」
気付いて慌てて付け足す。
「みんな頑張ってるけどね、二人は特に」
そんなことを言いながら、今日はもう何をしてもダメなような気がしていた。

「なんかこの面子やばくない?」
藤本が小川を見ながら言う。
「美貴ちゃんがね」
そう吐き捨てる小川を無視して、藤本が吉澤に聞く。
「で、どうするの?」
「娘。の今後について話し合う」
「なんか酒飲み話っぽくない?」
「そんなのミキティだけだって」
「美貴、甘いお酒しか飲めないのー」
藤本がかわいく言ったところで終了。

「ちょっと、二人とも脱線してるから」
小川のまともな発言に、藤本も吉澤も何故だか腹が立ったから。
「反省とかならできるけどさ、今後のことを話し合ったって、意味ないからね」
モーニング娘。は言われたとおりに動くだけだから。
そんな意味を込め、吉澤が自嘲気味にそう言ったから。

石川が不必要に緊張している。
自分がやらなければいけない。
しかも、ふざけてはいけない。
どうしていいのか、わからなくなってしまった。
口元を結び、膝に置いた手をじっと見つめている。

新垣は葛藤している。
ここは、もしかしたら自分がどうにかしなければいけないのではないか。
石川さんに頼って、任せっきりでいてはいけない、自分が……
でも、できない。

道重は、いつになく真剣な石川を前に、不安になってしまった。
ふざけて甘えてきてくれれば、どうにかできるのに。
ちゃんと真面目に話せるようになるのに。

穏やかで真剣で苦痛で無意味な時間が流れ落ちていく。


なんとなく外れくじを引いてしまったような気がしている、紺野と亀井。
「どうします? 紺野さん」
「話し合うっていってもねぇ……」
完全に頼られているこの状況に、紺野は困ってしまう。
いろいろと話したいことはあるのだが、こうかしこまるのは、なんだか違う気がする。
それに、話し合う、なんて超絶的に曖昧な言葉だ。
「ご飯食べながら考えようか」
「ほんとですかぁ!」
嬉しそうに顔を明るくさせる亀井に、紺野は戸惑う。
「……ん? うん。リラックスしながらのほうが、話しやすくない?」
「でも、途中で勝手に帰っちゃったら、まずくないですか?」
「大丈夫だよ。サボるわけじゃないんだから」
「やっぱり紺ちゃんって、マイペースだよねぇ」
「そんなことないよ」

紺野と亀井、帰った。


今日のモーニング娘。は頑張った。
でも、話し合いのための話し合いに終わる。